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2025.8.27業界トレンド/展望

全社DXを成功に導く「変革プログラム」の設計手法

DXによって企業・事業レベルの成果を創出するには、単なる技術導入や掛け声ではなく、企業が目指す姿を具体化し、その実現に向けて一貫した変革プログラムを設計することが不可欠である。適切に設計された変革プログラムは、戦略と個別プロジェクトを結び付ける橋渡しの役割を果たし、関係者が自分事として取り組める状態をつくり出す。本稿では、その設計手法を解説するとともに、変革プログラムを関係者間で共通理解とすることによって、どのような価値が生まれるのかを整理する。
目次

1.DX推進における変革プログラムの重要性

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なるIT導入にとどまらず、企業のビジネスモデルや組織のあり方そのものを変革する取り組みです。しかし、多くの企業では、以下の記事でもご紹介したように、DXの成果を全社規模に拡大することに苦戦しているのが実情です。

参考記事:
【前編】DXで全社レベルの成果を生み出すための処方箋「デジタルサクセスプログラム(進化版)」
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2025/0805/

【後編】DXで全社レベルの成果を生み出すための処方箋「デジタルサクセスプログラム(進化版)」
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2025/0822/

その背景には、DXがしばしば掛け声先行となり、実効性を欠いてしまう傾向があります。新しい技術やデジタルツールを導入するだけでは変革は実現しません。重要なのは、取り組みの目的やゴールを明確にし、経営層から現場までの関係者が納得感を持ちながら、同じ方向に進むことであり、これこそがDX成功の前提条件となります。

この前提を踏まえると、DXを実効性のあるものにするためには「変革プログラム」を適切に設計することが欠かせません。変革プログラムとは、単なる施策(プロジェクト)の羅列ではなく、企業が目指す姿に向けて、一貫したストーリーを描き、実行計画として具体化するものです。言い換えれば、企業が掲げる戦略と各プロジェクトを結び付ける“橋渡し”の役割を果たします。このプログラム設計が的確に行われてこそ、全社的なDXは持続的な成果へと結び付きます(図1)。

図1:変革プログラムによる戦略とプロジェクトの橋渡し

2.変革プログラムの設計手法

では、変革プログラムをどのように設計すればよいのでしょうか。以下の記事では、バリューツリーを用いて、プロジェクトの構造を整理する方法についてご紹介しました。

参考記事:DXの推進で全社レベルの成果を創出するカギ
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2024/0129/

このバリューツリーを「変革プログラム」に昇華させるには、ツリーとして表現したテーマを具体的な状態目標へ落とし込むことが重要です。例えば「データドリブン経営の実現」という表現だけでは、何をどこまで実現すべきかが曖昧であり、プログラム全体の方向性を統一するには不十分です。「全社員のxx%がデータ分析基盤を活用し、意思決定をデータドリブンに行える状態」といったように、実現すべき「状態」としてゴールを具体化することで、現状との差分が明確になり、必要な取り組みを体系的に整理できます。

さらに必要に応じて、状態目標(WHAT)に加えて、変革の必要性(WHY)、目標達成の期限(WHEN)、実行体制や利害関係者(WHO)、ビジネス効果(HOW MUCH)などを網羅的に定義することで、必要な取り組み(HOW)をより精緻に設計することが可能となります(図2)。

図2:変革プログラムのゴールとその実現に必要な取り組み

すでにDXで部分的な成果を上げている企業であれば、バリューツリーをトップダウンで整理するだけでなく、これまでの取り組みを振り返り、その成果や課題を実行計画に反映させることが不可欠です。例えば、「データ分析基盤の活用が進まない」という現状がある場合、トップダウンで考えると「より高度な分析機能の導入」といった施策が思いつきがちです。しかし、利用者である社員の声を把握しなければ「導入しても使われない」という結果を繰り返しかねません。

実際に、基盤を利用している社員が、「機能を使いこなせない」、「必要なデータが探せない」といった困りごとを抱えているのであれば、新機能の導入よりも、「操作方法のレクチャ」や「問合せ体制の整備」といったアプローチのほうが効果的かもしれません。このように、目標に照らした困りごとを起点に計画を立てることで、実効性のあるDXを実現できます(図3)。

図3:これまでの取り組み成果を踏まえたDX施策の策定

3.変革プログラムを共通理解とすることで得られる効果

変革プログラムを経営層、現場社員、ならびにパートナー企業(委託先)を含めた関係者全員の共通理解とすることは、組織全体の推進力を高めるうえで大きな効果をもたらします。プログラム目標を基準に据えることで、振り返りや意思決定が一貫性を持ち、持続的な成果につながるからです。

  • 経営層にとって:プログラム目標に対する進捗を把握することで、リソースの投資先や、重点的に改善すべき領域を俯瞰できます。
  • 現場社員にとって:自分たちの活動が企業全体のゴールにどう結び付くかを理解することで、日々の課題にも大局的な視点から対応できます。
  • パートナー企業にとって:企業固有の慣習にとらわれない視点からプログラムの妥当性を評価し、他社の成功事例や失敗の教訓を踏まえた実効性の高い支援を提案できます。

私たちNTT DATAも、こうしたパートナー企業の一員として、単なる支援にとどまらず、お客さまの変革を持続的に進めるための提案を行っています。特に、全社的な施策を推進するDX部門では、事業部門の現場に潜む困りごとまでは把握しきれない場合があります。そこで私たちは、複数部署を横断的に支援している知見を活かし、現場の声をプログラム目標に照らして課題化し、施策の改善につなげています。図4の通り、①現場の課題を踏まえた提言によって、②デジタル変革施策をより良いものにし、③現場にとって役立つ環境やサービスを提供することで、④現場での支援活動もやりやすくする――この好循環を実現することで、お客さまに持続的な価値を提供しています。

図4:横断支援による現場起点のDX価値提供サイクル

4.終わりに

本稿では、DXを持続的な成果へと導くための変革プログラムの考え方と、その実践ポイントをご紹介しました。NTT DATAは、多様な現場で培った知見をもとに、お客さまのDXを実効性あるプログラムとして設計し、成果につなげるご支援をしています。DX推進に課題を感じている方は、ぜひご相談ください。

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

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