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2025.8.5業界トレンド/展望

【前編】DXで全社レベルの成果を生み出すための処方箋「デジタルサクセスプログラム(進化版)」

多くの企業でDXの取り組みが進められているが、個々の施策で一定の成果を収めている企業が増えてきている。これらの企業が次に取り組むべきは、その成果をスケールさせるために全社的にDXの取り組みを展開することである。本稿では、成果スケールを目指す際に直面する代表的な5つの壁と、それらの壁を乗り越えるための処方箋を「デジタルサクセスプログラム(進化版)」として、具体例を交えてご紹介する。
目次

1.DXの現状

現在多くの企業でDXの取り組みが進められています。2023年DX白書の結果を見ると、DXの取り組みで何かしらの成果を創出し、さらなる成果創出に向けて継続して取り組みを行っている企業(DX先行企業)が占める割合は40%に上るようです。しかし、当社にいただくさまざまなご相談を踏まえると、全社レベルの成果を創出できている企業(DX先進企業)は、まだ限定的であると想定されます。

図1:DXの取り組み状況と推奨アプローチ

デジタル活用による企業変革を実現することは、避けられない経営課題と言えますが、取るべきアクションは現在の取り組み状況に応じて異なります。これからDXの取り組みを本格化するDX途上企業においては、まずスモールスタートでクイックに成果を創出し、改善サイクルを回しながら展開することをお勧めしています。具体的な取り組みは以下の記事でご紹介していますので、合わせてご参照ください。

参考記事:デジタル変革・DXを成功に導く「デジタルサクセス™」
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2020/1028/

DX先行企業では、これまで創出してきた成果をスケールさせるために、全社的にDXの取り組みを展開することが必要となります。お客さまからご相談いただく成果スケールに向けた課題はさまざまですが、これまでのご支援実績から一定の傾向が見えてきています。そこで本稿では企業が成果スケールにあたり直面する課題と、それらの課題に対するNTTデータの考える処方箋を「デジタルサクセスプログラム(進化版)」と題して、前編・後編に分けてご紹介します。

図2:デジタルサクセスプログラム(進化版)の位置付け

2.全社レベルの成果創出に向けた5つの壁

DX先行企業が成果をスケールさせ、全社レベルの成果創出を目指す際に乗り越えるべき壁は、以下の5つに当てはまることが多いと考えます。それぞれの壁について、具体例を交えてご説明します。

図3:全社レベルの成果創出に向けて乗り越えるべき5つの壁

1つ目の壁:経営課題の解決に直結しない変革テーマ

1つ目の壁は、変革テーマが各組織での業務改善に偏ってしまい、本来取り組むべき効果の大きな経営テーマに取り組めていないことです。組織の縦割り指向やクイックウィン指向が強い場合、各組織に閉じた小粒なテーマが大半を占め、①経営課題の解決に資さないテーマ設定となっているケースがあります。その場合、実行段階でも取り組みやすい効率化に終始するなど②場当たり的なテーマ実行がなされ、長期的に取り組むべきテーマに戦略的に対応できていません。

図4:【1つ目の壁】経営課題の解決に直結しない変革テーマ

2つ目の壁:組織ごとに実行される変革テーマ

2つ目の壁は、経営課題からテーマが導出できておらず、組織横断で変革テーマやプロジェクトを実行できていないことです。経営課題の解決に必要なテーマやプロジェクトを漏れなく落としこめておらず、①経営課題とテーマやプロジェクトが断絶しているため、個々のプロジェクトが成功しても経営的に期待した成果を上げられない状態となっていることがあります。また、テーマ・プロジェクトを体系的に整理できていないと、ステークホルダを巻き込んだ②組織横断的なプロジェクト運営が困難なため、あるプロジェクトで発生した問題が他のプロジェクトに波及したり、対応が後手となる場合もあります。さらに、各組織が個別独自にプロジェクトを実行・管理しているため、組織間でノウハウが共有されずに、③非効率なプロジェクト運用になっている問題もあげられます。

図5:【2つ目の壁】組織ごとに実行される変革テーマ

3つ目の壁:拡張性に欠けるデジタルシステム

3つ目の壁は、テーマ数の増加に伴い、デジタルシステムのコスト増大と共に、スピーディーな対応が難しくなることです。特にボトムアップでDXの取り組みを進めてきた企業では施策や組織ごとにIT環境を構築していることが多く、①テーマ拡大に伴いITコストが右肩上がりに増大し、投資対効果が出しづらくなっています。テーマ実行に新技術の活用や顧客接点対応が必要な場合、ITガバナンス対応やシステム改修に時間を要し、②ビジネス推進へのスピーディーな対応が困難なケースも多く存在します。また、成果スケールには一般ユーザーの活用拡大も重要ですが、環境整備が不十分だと③全社へのデータ利用普及が停滞してしまいます。

図6:【3つ目の壁】拡張性に欠けるデジタルシステム

4つ目の壁:膨れ上がるAIモデル・データの運用負荷

4つ目の壁は、AIやデータ分析の導入拡大に伴い、維持・運用に要する工数が増大することです。AIモデルの活用には、モデルの利用状況モニタリングや精度評価、リモデリングといった維持運用の工数が必要です。この①AI開発拡大に伴う運用負担増大がスケール時の問題となります。社内から顧客向けへの②AI適用範囲が拡大するに伴い、リスク対応負担が増大することも見逃せません。顧客向けのAI活用には、AIモデルによる差別や不適切なふるまいがないかチェックが必要ですが、人手でのチェックが行き届かなくなる懸念もあります。社内活用の観点では、データ管理が不十分だと③組織をまたがったデータ利用時の工数増大も懸念事項としてあげられます。

図7:【4つ目の壁】膨れ上がるAIモデル・データの運用負荷

5つ目の壁:テーマ拡大に追随できない組織運営や人財供給

5つ目の壁は、テーマの拡大に組織の成熟や人財の供給(質・量ともに)が追い付かず、実行できるテーマが限られてしまうことです。各組織のミッションが全社なDX推進に向けて再整理されていない場合、①各部門個別でのテーマ実行が進められるなど、デジタル部門・各部門間の連携がうまくいかないことが多くあります。人財の観点では、人財の質・量の不足のためにテーマを拡大できず、②テーマ拡大と人材供給のバランスが不均衡に陥らないようにすることも重要です。

図8:【5つ目の壁】テーマ拡大に追随できない組織運営や人財供給

ここまでにご紹介したDXによる成果スケールに向けて直面する5つの壁とその例をまとめます。

図9:壁と具体例のサマリ

後編ではこれらの壁を乗り越えるための処方箋についてご紹介します。

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