1.NTT DATAの考える処方箋
前編では、すでにDXの取り組みにより何らかの成果を創出しているDX先行企業が、その成果を全社レベルにスケールさせ、DX先進企業を目指す際に乗り越えるべき「5つの壁」をご紹介しました。

図1:乗り越えるべき5つの壁とその具体例(前編再掲)
これらの壁を乗り越え、全社レベルの成果を創出するためには、どのような対応が必要でしょうか。これまで各企業での取り組みをご支援してきた経験を踏まえた、NTT DATAの考える処方箋を「デジタルサクセスプラン(進化版)」としてご紹介します。
処方箋1:経営に資する変革テーマの立案
まず、経営課題の解決に直結する変革テーマを策定し、成果創出に向けたテーマ実行の道筋を明確化することが重要です。自社の経営方針を踏まえ、企業の収益・成長(新規ビジネス立ち上げ・売上向上など)といった①経営課題を真正面から見据えた変革テーマを逆算思考で設定します。ボトムアップ思考に陥らないように、中期経営計画などを踏まえた高い目標としてDXの目指す姿を設定し、その目標から逆算して取り組むべきテーマに落とし込んでいくことがポイントです。
さらに、設定したテーマにどのように取り組んでいくかの変革ロードマップを描き、事業成長に向けて着実に推進していく必要があります。その際、既存ビジネスの貢献で成果を上げながら、その収益を新規ビジネスの成長に向けた投資に回すなど、②継続的な効果創出を考慮したテーマの取り組み計画を立案し、戦略的に取り組むことが求められます。

図2:【処方箋1】経営に資する変革テーマの立案
処方箋2:組織横断での変革テーマの遂行
実行フェーズでは、経営課題から適切にテーマ・プロジェクトを設定し、横断的にプロジェクトを運営する仕組みを確立します。
経営課題とテーマ・プロジェクトを構造的に整理し、KPIを整合させるなど、①経営課題とテーマ・プロジェクトを有機的に結びつける仕組みの確立が求められます。経営課題を起点として必要な取り組みを全社的・網羅的に抽出、整理する「タテ」のデザインには、価値創出に至るつながりを明確化できるバリューツリーを活用するなど、バリューエンジニアリングの取り組みも有効です。
また、変革テーマの実現には、②企業全体での変革プログラムを確立し、体系的にプロジェクトを定義して、それらを有機的・効果的に実行することが肝要です。プロジェクト間をまたいだ統合的なマネジメント(プログラムマネジメント)を推進して、ステークホルダを適宜、関与させていく必要があります。
さらに、各組織が参照する標準的なプロジェクト推進プロセスを整備し、プロジェクトの実行レベルを底上げすると共に、振り返りによりプロジェクトで得られた知見を組織知化していく③組織横断的なDX推進プロセスを確立することも重要です。

図3:【処方箋2】組織横断での変革テーマの遂行

図4:バリューエンジニアリング/プログラムマネジメント/DX推進プロセスの連携
なお、本項に記載した内容は、以下の記事でもご紹介しております。ご興味のある方は合わせてご参照ください。
参考記事:DXの推進で全社レベルの成果を創出するカギ~先進事例に学ぶ、DX推進組織が担うべき役割と具体的な取り組み~
処方箋3:ビジネス成長に柔軟に対応できるデジタル技術導入
3つ目の処方箋は、デジタル基盤やIT導入プロセス、データ分析環境を整備し、テーマ数増加に伴うコスト負荷の低減とスピーディーな対応を実現することです。
モダンデータスタックなどクラウドネイティブなソリューションを採用したアーキテクチャを構築することで、会社全体でのIT環境の整合性を維持しつつ、ビジネス成長とコストを連動させるとともに、アジリティや拡張性を兼備した①ビジネス成長に順応できるデジタル基盤を整備することをお勧めしています。
また、ビジネスの成熟に合わせたシステム拡充を効率的に実施するために、新技術検証・顧客接点対応のプロセス・ルールを明確化するなど、②デジタル導入の効率化に向けたプロセスを確立することも重要です。
さらに、ユーザー拡大の観点では、GUIベースの支援ツールやナレッジ共有の仕組みなどを具備したデータ分析環境など、③企業全体でデータ活用を推進する環境整備を図ることで、分析テーマ数やデータ利用部門の増加に柔軟に対応すると共に、一般ユーザーのデータ活用促進を実現できます。

図5:【処方箋3】ビジネス成長に柔軟に対応できるデジタル技術導入

図6:Modern Data Stack
処方箋4:AIモデル・データの普及に伴うプロセス・環境整備
4つ目の処方箋は、AIモデルやデータの管理プロセスや実行環境を整備することで維持運用の効率化を図り、維持の負荷やリスクを低減することです。
①AIモデル管理機能の導入(MLOps)により、AIモデルの維持運用に関するワークフローを自動化することで、生産性の向上、維持コストを抑止できます。
また、AI利用の指針を定め、AI品質に関わる開発プロセスと品質管理プロセスを整備する、AI倫理に関わるAIリスクマネジメントのプロセスを整備してAIリスク対応負荷を軽減しながらAIを安全に利用するなど、②AIガバナンスプロセスの構築も重要です。
さらに、組織横断での効率的なデータ利用に向けては、全社的なデータ利用の構想策定やデータ管理態勢など③データドリブン運営に向けた業務環境整備も求められます。

図7:【処方箋4】AIモデル・データの普及に伴うプロセス・環境整備

図8:MLOps
処方箋5:DX展開に合わせた組織・人財の整備
5つ目の処方箋は、テーマの拡大に追随できるように、DXを推進するための組織づくりや育成による人財補充を推進することです。
デジタルを中心に事業を展開する組織の実現に向けて、デジタル部門を含む各組織のデジタル変革に向けたミッションを再定義し、役割分担を明確化して①デジタルオリエンテッドへの組織変革を図ります。各事業部門の成熟度に応じたデジタル部門の関与、部門間連携、コモディティな領域の外部人財活用など、テーマ推進における組織面での仕組みの整備も重要です。
また、テーマ拡充を見越してDX人財戦略を立案するとともに、従来の人財育成に加えて社内人財のリスキルによる内部での人財確保、外部ベンダとのアライアンスやアウトソースによりDX人財を確保するなど、②計画的なDX人財の調達も必要です。

図9:【処方箋5】DX展開に合わせた組織・人財の整備
参考記事:デジタルサクセスを支える組織と人材の在り方 ~DXを推進し成功に導くためのポイント~
ここまでご紹介した「成果スケールに向けて乗り越えるべき5つの壁」とその処方箋をまとめます。

図10:成果スケールに向けて乗り越えるべき壁とその処方箋
2.DXによる成果スケールに向けたご支援
前編・後編にわたり、DX先行企業が成果スケールを目指す際に乗り越えるべき代表的な壁とその処方箋をご紹介しました。
成果スケールには、自社の現状や成熟度を分析し、直面している壁とこれから直面する壁を正しく把握したうえで、乗り越えるための取り組みを段階的かつ着実に進めていくことが求められます。
NTT DATAはお客さまのデジタルサクセスに向け、ビジネス・業務、データ、IT、人財・組織の各要素に対する豊富な支援経験で培った「壁を乗り越える」ための体系的な方法論や具体的なソリューションをご提供しています。お客さまの現状に合わせ、経営課題を踏まえたDX戦略策定から、具体的な施策の実行・定着化、最終的な成果創出まで、一気通貫かつ伴走型でのご支援が可能です。
DXによる成果が思うようにスケールしないなどの課題を抱えている方は、ぜひ当社までご相談ください。
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