生成AIの活用により、ビジネスを「労働集約型」から「AI駆動型」に
日本では人口減少やIT人材不足が深刻化し、生成AIの需要が急増しています。
多くの業界、業種の企業が業務効率化や生産性向上のために導入を進めていますが、現時点ではメール作成や文書評価など特定のタスク支援にとどまり、抜本的な業務効率化には至っていないのが現状です。
今後重要となるのは、生成AIの活用を点(個別タスク)から線(業務プロセス)、さらには線から面(全社展開)へと広げていくことです。これにより、私たちのビジネスは労働集約型からAI駆動型へ転換し、新たな価値創出が期待されます。
当社では、オフィスワーカーの生産性の抜本的な向上を目指し、生成AI活用のコンセプト「Smart AI Agent™」(※1)の実現に取り組んでいます。
これは、オフィスワーカーの業務に最適化されたAIエージェント「パーソナルエージェント」が、複数の専門性を持ったAIエージェント「特化エージェント」と連携し、対象業務のタスクを抽出・整理・実行するものです。具体的には、法務や経理、人事といった業務に特化したエージェントや顧客の行動特性を学習した特化エージェントが連携し、利用者の業務に最適化された業務の自動化など新たな労働力の提供を行うことができます。

図1:「Smart AI Agent™」を実現する技術要素
「Smart AI Agent™」の技術要素は以下の4つになります。これら4つを活用し、連携させることで、圧倒的な生産性の向上を目指します。
- 1.パーソナルエージェント
利用者の業務を把握し、自律的にタスクを組み立て、特化エージェントやデジタルワーカーへのタスク割り振りを自動化する。 - 2.特化エージェント
経理、営業、法務、人事などの専門知識を活かしてタスクを実行する。 - 3.デジタルワーカー
システム入力やファイル作成など、単純かつ定型的なタスクを実行する。 - 4.マルチエージェント
パーソナルエージェント、特化エージェント、デジタルワーカーが相互に連携し、協働で利用者の望むタスクを遂行する。
お客さまのビジネス変革に向けた取り組み
では、企業ではどのように生成AIが活用されているのでしょうか。
「Smart AI Agent™」のコンセプトに基づく生成AIの活用事例について、4件の顧客事例とNTT DATA社内における2つの取り組みに分類し、それぞれの実用性や成果についてご紹介します。
まず、東京ガス株式会社がマーケティング業務に生成AIを活用した事例をご紹介します。
同社では、顧客接点が多様化することによるマーケティング業務量の増加が課題となっていました。当社は、担当者と協力して既存業務を整理し、AIの適用が可能な部分を特定しました。また、ターゲット設定から施策提案まで一連の流れを支援する「マーケティング施策用アプリ」を開発し、業務プロセス全体の効率化を実現しました。

図2:マーケティング領域DX(東京ガス株式会社)
東京ガス株式会社の事例について、詳しくはこちら:
生成AI活用により東京ガスのマーケティング領域のDXを推進 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP
次に、ライオン株式会社での生産技術分野の「暗黙知」を伝承する取り組みについてご説明します。これまでに蓄積された研究データやマニュアル類、過去事例、法律、業界団体ガイドラインなどの形式知を若手職員や未経験者に伝える仕組みはあったものの、熟練技術者の持つ暗黙知を伝承するのが難しいという課題がありました。そこで、熟練技術者へのインタビューを通じてノウハウや経験などを記録し、「知識伝承AIシステム(特化エージェント)」にデータとしてインプットすることで、若手職員や未経験者がAIとのインタラクションを通じて知識を習得できる仕組みを構築しました。結果、形式知をマニュアルで参照する従来のRAGと比較し、暗黙知を活用した特化エージェントの回答品質を大幅に向上させることができました。

図3:生産技術領域の暗黙知伝承①(ライオン株式会社)

図4:生産技術領域の暗黙知伝承②(ライオン株式会社)
ライオン株式会社の事例について、詳しくはこちら:
国内熟練技術者の技術継承に向け、生成AIを活用した暗黙知伝承に関する取り組みを開始 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP
続いて、三菱地所株式会社との取り組みである、「丸の内AIコンシェルジュ」についてご紹介します。MICE(※2)目的で丸の内エリアを来街する人たちと観光客へ効果的な情報発信ができていないという課題がありました。そこで、LLM(※3)とRAG(※4)を活用し、最新のエリアイベント情報やおすすめの飲食店情報などを利用者に提供するAIチャットボット(特化エージェント)を構築しました。MICE目的の来街者・観光客への効果的な情報発信を実現し、エリア全体の回遊性向上に貢献しています。

図5:三菱地所株式会社 丸の内コンシェルジュ
三菱地所株式会社の事例について、詳しくはこちら:
都市OSと連携した地域情報を提供「次世代型AIコンシェルジュ」開始 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP
加えて、広告コンテンツの制作においても生成AI技術の活用が進んでいます。
豊洲スマートシティ推進協議会のオフィシャルサイトに掲載する、イベント告知の広告コンテンツ作成に生成AIを活用しました。対象ペルソナにあわせたタイトルやメッセージの作成などを行い、ファミリー層と若年女性層それぞれに最適化された広告コンテンツを自動生成し、クリック率・サイト訪問率の高い広告を実現しました。

図6:豊洲スマートシティ推進協議会/コンテンツ自動生成
豊洲スマートシティでの取り組みについて、詳しくはこちら:
豊洲来訪者の属性にあわせた広告を生成系AIで作成・配信する取り組みを開始 | NTTデータグループ - NTT DATA GROUP
MICE(企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event))
Large Language Model:大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理モデルのこと。
Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成。テキスト生成に、外部情報の検索を組み合わせ、回答精度を向上させる技術のこと。
ソフトウェア開発における生成AI活用
これまでは生成AIがお客さまのビジネス変革にどう役立つかを説明してきました。ここからは、NTT DATA自身がどのように生成AIを活用し、自社のビジネスを変革しているかをご紹介します。
まず、超上流工程における非機能RFP診断の生成AI活用事例です。
NTT DATAは社内で蓄積してきた有識者の知見・ノウハウを利用し、生成AIが有識者として非機能要件における内容をチェックする仕組みを取り入れています。RFP(Request for Proposal:提案依頼書)ドキュメントを「ドキュメント診断エージェント(特化エージェント)」にインプットすることで、難易度の高い箇所や潜在リスクとともにアクションプランを提示します。導入により、RFPのチェックの品質を維持・向上させながら、対応に係る期間を約6割短縮させる導入効果が得られました。

図7:非機能RFP診断(NTT DATA社内)
さらに、設計書作成からレビュー工程まで、開発の全工程を対象とした、マルチエージェント機能の導入による開発プロセス全体の自動化・効率化にも取り組んでいます。
統括エージェントが全体管理を担い、各個別エージェントが設計、レビュー、修正、テストケース生成といった工程を自律的に実行します。これにより、従来は手作業で対応していた各種工程を生成AI技術により円滑に処理可能となり、開発スピードの大幅な向上が実現されました。

図8:開発スピード向上①(NTT DATA社内)

図9:開発スピード向上②(NTT DATA社内)
NTT DATAでは、これらの事例を実現するための外部SaaSやエージェントとの連携、既存データプラットフォームとの統合、LLMOps、セキュリティ・ガバナンス、コスト最適化まで、包括的なプラットフォーム構築ケイパビリティを保有しています。特にモデル評価改善、業務連携・ユーザビリティ、AIガバナンス、自動化サイクル、データ連携・処理、コスト管理・パフォーマンス最適化などの要素を統合的に提供しながら、継続的な改善サイクルを構築することで、実用的な生成AI環境を実現しています。
図10では、AWSで実現する生成AIのプラットフォームの一例を示しています。こちらは5月時点で描いたプラットフォーム図になりますが、7月には「Amazon Bedrock AgentCore」
が発表され、現在は検証を実施しながら取込を検討しています。急速にテクノロジーが進化する中で、常にアップデートを繰り返しながら進化を続けていくことが重要です。

図10:AWSで実現する生成AIプラットフォームの全体像(例)
今後の展望
生成AI技術は急速に進展しています。NTT DATAは「開発して終わり」ではなく、クライアントのAI利活用成熟度やテクノロジー進化に応じてプラットフォームおよびサービスの継続的な最適化と高度化を推進する体制を整備しています。
点から線、線から面へと拡張するAIの利活用において、NTT DATAは引き続きAIの社会実装を加速し、変革パートナーとしてお客さまの事業価値創出を支援してまいります。
生成AIについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/generative-ai/
OpenAI Japan と NTT DATA の社長対談はこちら:
https://ps.nikkei.com/nttdata-foresight2404/19.html
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