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2025.9.10技術トレンド/展望

AIエージェントが変えるビジネスの未来

~タスクからビジネス自動化へのロードマップ~

生成AIは、メール作成や資料要約といった「作業の効率化」を超え、いまや企業の競争力そのものを左右する存在になりつつある。今後その中核を担うと言われるのが、「AIエージェント」だ。
NTTデータにおける生成AI研究開発のスペシャリストである大木環美は、AIエージェントによって「2027年までに、AIエージェントは『タスク』の自動化から『プロセス』の自動化、そして『ビジネス』の自動化へと進化する」と語る。
AIエージェント活用の現在地とは。また、AIエージェントはどこまで進化するのか。ビジネスパーソンが知っておくべきAIエージェントの現在と今後の展望について解説する。
目次

AIエージェントの定義と3つのタイプとは?

AIエージェントとは「自律的・主体的に業務やビジネスを遂行するアプリケーション」のことを指します。生成AIに「文章を書いてもらう」といった単発のタスクとは異なり、AIエージェントは複数のタスクを組み合わせた業務全体を遂行します。

たとえば、「出張の準備をして」と依頼した場合、生成AIであれば航空券の候補を提示する程度かもしれませんが、AIエージェントなら交通手段や宿泊先の調査、選択、さらには予約確定までを一連のプロセスとして自動で完了させることが可能です。

図1:AIエージェントの定義

こうしたAIエージェントのタイプとして、我々はSPEEDA Edgeのリサーチをもとに大きく3つのタイプを定義しています。

1.AI Workflows
“事前に定義”されたワークフローをLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)がさまざまな情報を参照しながら自動的に実行するものです。例えば、「請求処理」の業務であれば、請求書の確認→データ入力→承認依頼といった一連の流れを、人間の指示なしに完了できます。定型的な業務であれば、人間によりデータを定義し、実行を自動化するAI Workflowsは業務プロセスの改善に有効なAIエージェントです。

2.Autonomous Agents
人間からのリクエストを受けて、AIエージェントが“自律的にワークフローを設定”し、実行します。「新商品の販促計画を立ててほしい」と依頼すれば、情報収集から計画立案、資料作成までを自律的に進めます。人間が細かい手順を定義する必要がなく、より柔軟で幅広い業務に対応可能です。

3.Agentic AI
実行過程でユーザーからのフィードバックやLLM自身の出力を評価し、“自ら改善”していく能力を持ちます。タスクの進行中にユーザーからのフィードバックを受け取るUser In The Loop(UITL)や、自分自身で結果を振り返るリフレクションを活用して、プロセスを最適化していきます。さらに、複数のAIエージェントが相互に議論し、最良の解を導き出すような仕組みも研究されています。

すでに、「Autonomous Agents」は実用化が始まっており、「Agentic AI」も開発が進んでいます。ただし、ビジネス現場で安定的に運用できるかという点では、まだ挑戦が残されています。今後は技術開発と同時に、ビジネス適用を前提とした実証実験(PoC)を積み重ねながら、社会実装に近づけていくことが重要になるでしょう。

AIエージェントが求められる背景

では、なぜ今AIエージェントが求められているのでしょうか。現在、さまざまな業界で人手不足が深刻化し、生産性向上が喫緊の課題となっています。限られた人材で成果を最大化するためには、人間は付加価値を生む業務に集中し、それ以外の業務はテクノロジーによって効率化・自動化する必要があります。これまでも企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、RPAやクラウド化によって業務を変革してきました。しかし近年は、その主役が生成AIに移りつつあります。

自分の持っている情報をインプットにチャットで質問をすると精度の高い回答を返してくれるような、生成AIによる「タスク」の自動化は、すでに多くのビジネスの現場で活用されてきました。そして次の大きな波が、AIエージェントによる「プロセス」全体の自動化です。単発のタスク処理にとどまらず、企画から実行、改善までを一貫して担うことで、ビジネスそのものの自動化へと進化していく。これが今、AIエージェントが強く求められている理由なのです。

図2:生成AIビジネスの展望

NTTデータはグローバル全体で既に1,000件を超える生成AI活用案件を手がけています。これまでは、文章作成や要約といった「タスク」単位の自動化が中心でしたが、今後2~3年で、企業からのニーズはさらに高度化し、業務の「プロセス」やビジネス全体の自動化が本格化するでしょう。

あらゆる業界・業務で活用できるAIエージェントの可能性

具体的にどのような分野でAIエージェントが活用できるのでしょうか。NTTデータでは、その活用領域を体系的に整理するために「Expertized Agentマップ」を作成しています。

図3:AIエージェント機能を体系的に整理した「Expertized Agentマップ」

このマップは、業界/業務・機能・処理・コア技術の4つのレイヤーで構成されています。

  • 業界レベル:官公庁、金融、保険、製造業など、あらゆる産業に対応
  • 業務レベル:人事、財務などのバックオフィス業務から、セールス、マーケティングといったフロント業務まで幅広く対応
  • 機能レベル:コンサル、調査、レポート作成など、知的業務の支援
  • 処理レベル:データ収集・分析、情報検索、画像・音声解析などの基盤的タスク
  • コア技術レベル:NTTデータが開発する、AIエージェントを支える最先端技術群

この「Expertized Agentマップ」の最大の特徴は、各レイヤーのエージェントを組み合わせることで、迅速に業務変革を実現できることです。同じAIエージェントを何度も作るのは非効率です。そのため、既存のAIエージェントを再利用し、必要に応じてカスタマイズして展開する仕組みにより、迅速かつ効率的な業務変革の実現を目指しています。

このマップを活用することで、お客さまの課題に対して「どのエージェントを組み合わせれば最適なソリューションになるか」を素早く特定でき、開発効率の大幅な向上が期待できるでしょう。

AIエージェント活用5つの事例

金融業界における営業プロセスの自動化

金融業界の営業担当者は、日々多くの情報収集に追われています。
顧客の課題をヒアリングし、業界動向や売り上げデータを分析し、過去の商談履歴を確認したうえで、膨大な商品ラインナップから最適な提案を導き出さなければなりません。そのプロセスには膨大な時間と労力がかかります。
こうした情報収集・分析・提案書作成の一連の業務をAIエージェントで自動化することで、営業担当者は顧客との信頼関係の構築や顧客への商談といった本質的な業務に集中できます。まるで、優秀な秘書が何人もチームを組んでサポートしてくれるような環境を実現できるのです。

NTTデータが提供する「LITRON Sales」も、AIエージェントを活用した営業支援ソリューションの一つです。優秀なAIエージェントのアシスタントたちが、営業担当者の右腕としてサポートしてくれる——これが次世代の営業スタイルになっていくでしょう。

損害保険査定業務の改革

損害保険の査定業務は、事故の事実確認から判例との照合、レポート作成、最終的な判定まで、専門知識と膨大な労力を必要とする高度なプロセスです。担当する審査員には常に大きな業務負荷がかかり、人的リソースの確保も課題となっています。
NTTデータが開発したシステムでは、事故映像を自動解析し、動画情報と事前情報を組み合わせて、査定マニュアルの該当章を特定して判定。担当者とAIが協調しながら作業を進めることで、品質を担保しつつ大幅な時間短縮を実現しています。

製造業での製品開発プロセスの効率化

製造業では、実際に製造を開始する前のシミュレーションが極めて重要です。大型製品の場合、作り直しには膨大なコストがかかるため、設計段階で法規制への適合性や安全性を十分に検証する必要があります。

従来、要件定義工程におけるシミュレーション作業には高度な専門知識が求められ、膨大な工数が発生していました。
NTTデータでは、製品開発モデルでの要件定義工程の所要時間を大幅に削減し、必要な条件設定や検証をAIが自律的に進めることで、製造プロセス全体の効率化を支援しています。これは、デジタルツインの取り組みとも密接に関連しており、AIエージェントによって、製造業はより安全でスピーディーなものづくりへと進化していくのです。

マーケティング領域での活用

マーケティング業務は、ターゲット設定から施策提案まで幅広く、膨大なデータと判断が求められる複雑な領域です。ここでもAIエージェントは大きな成果を生み出しています。東京ガスとの取り組みでは、マーケティング活動のサイクル全体を支援する「マーケティング施策支援アプリ」を開発しました。ターゲット定義からペルソナ設定、カスタマージャーニーマップ作成、課題分析・施策提案まで、一連のマーケティング業務を一気通貫でAIエージェントが支援しています。

また、JALカードとの取り組みでは、「AIバーチャル顧客」同士で会話させて最も反応の良かったユーザーグループにダイレクトメールを送るという手法で、高級商材の購買率が向上した実績もあります。

JALカードの事例についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2025/0815/

海外での保険業界の保険金請求処理

グローバル事例として、海外の保険業界における保険金請求処理業務の自動化も進めています。保険の種類を判定するプロセスにおいて、AIエージェントがユーザーと直接やりとりし、必要な情報を収集・処理するシステムを提供しています。
海外では、日本と比べて自動化の導入が積極的に進んでおり、NTTデータは自動化を支える技術を提供することで、効率化とスピード向上に貢献しています。

これらの事例からわかるように、AIエージェントは特定の業界や業務に限定されるものではなく、あらゆる分野で業務効率化と品質向上を同時に実現できる可能性を秘めているのです。

NTTデータが描くAIエージェントと協働する世界「Smart AI Agent®」

NTTデータでは生成AIの活用コンセプトとして「Smart AI Agent」という構想を掲げています。「Smart AI Agent」は、4つの構成要素から成り立っています。ユーザーと対話し依頼を理解してタスクを組み立てる「パーソナルエージェント」、特定の業務知識を持ち、深い検討を行う「特化エージェント」、定型的で反復的なタスクを確実に実行する「デジタルワーカー」、そしてエージェント同士が連携し、協調して業務を遂行するための「マルチエージェント技術」です。

図4:「Smart AI Agent」の4つの構成要素

私たちはパーソナルエージェントがマルチエージェント技術を介してデジタルワーカーや特化エージェントと連携し、ユーザーのリクエストを解釈して業務を自律的に実行していく世界を目指しています。パーソナルエージェントが自律的なタスクを組み立て、専門知識を持った特化エージェントがタスクを検討し、デジタルワーカーが単純・定型タスクを実行する——まさにチームワークを生成AIが再現していくと考えています。

さらに私たちは、基盤からアプリケーションまでをフルスタックで提供することで、このコンセプトを一気通貫で実現しようとしています。Digital BPS(デジタルビジネスプロセスサービス)への貢献を通してクライアント業務の抜本的改革を加速させていきます。

NTTデータのAIエージェント開発における強み

NTTデータでは「Smart AI Agent」の実現のため、さまざまな取り組みを実施しています。

1つ目は、統一的なアーキテクチャと品質担保を含めた開発ガイドラインの策定です。各プロジェクトで独自開発を行うと、品質のばらつきや開発生産性の低下、ナレッジの分散といった課題が生じます。

これらの課題を解決するために策定したガイドラインでは、開発方法論、標準アーキテクチャ、実践的なアーキテクチャの構成を体系的に整理し、安心・安全なAI エージェント実装を可能にしています。

2つ目は、ハイパースケーラーとの戦略的パートナーシップです。NTTデータはGoogleやOpenAIといったハイパースケーラーと連携し、独自のポジショニングを確立しています。
特にOpenAIの販売パートナーとして日本で認定されているのは現状当社のみであり、この強固な関係が最新技術の活用を加速しています。

3つ目は、ビジネス適用の実践です。
ハイパースケーラーが提供するのは主に共通技術ですが、それをお客さまのビジネス基盤に適用して成果を出すにあたっては、独自の知見が不可欠です。私たちは、こうした実装・運用面でのギャップを埋める存在として、現場に即した価値を提供するために、業務改革をE2EでサポートするBusiness Process Service(BPS)も提供しています。

AIエージェントが切り拓く未来への展望

繰り返しになりますが、NTTデータでは、2027年までにAIエージェントは「タスクの自動化」から「プロセスの自動化」、そして「ビジネスの自動化」へと段階的に進化していくと予測しています。
業務にまったく人が関わらなくなることはないでしょう。しかし、人が介在しながら、業務の大部分を自動化できる世界が確実に近づいています。私たちは、お客さまのビジネスを労働集約型からAI駆動型へと変革し、新たな労働力としてのAIエージェントを提供することで、生産性向上と競争力強化に貢献していきます。

AIエージェントは単なる技術的な進歩ではなく、働き方そのものを根本から変える可能性を秘めています。NTTデータは、その変革の最前線で、技術開発とビジネス適用の両面から、AIエージェントの可能性を最大限に引き出していきたいと考えています。

※Smart AI Agent®は、株式会社NTTデータグループの日本国内における登録商標です。

AIエージェント(AI Agent)についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/generative-ai/ai-agent/

生成AI(Generative AI)についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/generative-ai/

LITRON®についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/litron/

BPS(Business Process Services)についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/business-process-services/

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