AIエージェントサービスとIOWNデータハブ基盤で企業分析を高度化する共同実験を開始
~りそな銀行の法人営業における業務負荷軽減をめざし、企業情報収集・分析の自動化を検証~
トピックス
2025年10月15日
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、NTT株式会社(以下、NTT)、株式会社りそな銀行(以下、りそな銀行)、株式会社東京商工リサーチ(以下、東京商工リサーチ)と共同で、りそな銀行の法人営業における企業情報の分析業務の高度化・効率化を目的とした実証実験(以下、本実験)を2025年8月より開始しました。
本実験では、東京商工リサーチの「TSR REPORT(同社の調査員が全国の企業を対象に直接取材し、公開情報も加えて作成する国内企業調査レポート)」と公知情報を組み合わせ、営業先企業に対する同一業界の動向を踏まえた観点を追加することで、示唆に富んだ営業資料の充実を図ります。
この先、業界内でのポジションや商流構造の情報を加えることで新たな気づきを与え、営業機会の拡大をめざします。
実現方式として、生成AIサービス「LITRON®」と「IOWN」注1を基盤としたデータハブ技術注2を活用し、企業情報の収集・分析を自動化できる環境を構築します。これにより、熟練者知見の補完、営業担当者の業務負荷軽減と営業先企業への対応時間の拡大を支援します。
今後は、りそな銀行の営業店における実業務での検証を予定しており、その結果を踏まえた実導入や店舗拡大に加え、将来的には法人分野全体での幅広い業務への活用を検討していきます。
背景
近年のデジタル化により、企業が発信する情報はWebサイト、IR情報、SNS、ニュースリリース、サステナビリティレポート等、発信手段を含めて多種多様となっており、ESG・人的資本など非財務情報開示の拡大やサードパーティ企業より公表される企業評価などを含め、情報は増加の一途をたどっています。その中で、金融機関である銀行の法人営業では、融資提案をはじめ、非財務情報も加味した高度な経営アドバイスを多様な顧客ニーズに合わせて行うとともに、企業の信用度を踏まえつつ融資判断のリスク管理を正確に行う必要があります。このような背景から、銀行の法人営業担当者が企業訪問前に行う情報収集と分析作業は、担当者の知見や判断に依存する属人的な業務となっており、情報の増加に伴って作業負担が増加し、結果としてお客さまに対応する十分な時間を確保できない点が課題となっていました。
そこで、NTTデータはりそな銀行と共同で2024年より法人営業プロセスにおける企業情報分析の高度化・効率化の検証を開始し、2025年8月より、NTTと東京商工リサーチを加えた4社で共同実験を開始しました。
本実験の概要
本実験は、外部データの活用によって得られる示唆の高度化による営業機会創出、ならびに、AIエージェントを活用した企業情報の収集・分析業務の自動化による業務負荷軽減の効果検証を目的とします。
実証実験期間
2025年8月8日から2025年11月7日まで
実証実験内容
東京商工リサーチが提供する「TSR REPORT(国内企業調査レポート)」およびインターネット上のIR情報等の公知情報を情報源とし、NTTデータが提供する生成AIサービス「LITRON」、NTTのIOWNデータハブ技術を活用し、企業情報分析業務(顧客概要・財務分析・競合比較等を含む企業分析)にて導出される経営課題起点の営業トピック資料を作成し、営業担当者の視点からその有用性を検証します。加えて、多様なデータ形式で大量の情報をセキュアに管理・分析するために、分散する複数のデータソースを仮想的に一元管理するNTTのIOWNデータハブ基盤の構成要素である仮想データレイク注3を活用します。生成された経営課題起点の営業トピック資料は、実際に営業店で業務に携わるりそな銀行の従業員が評価し、そのフィードバックをもとにチューニングを複数回実施することで、精度と実用性の向上を図ります。
本実験において各社が提供したデータ・技術とそれぞれの役割
社名 | 提供データ・技術等 | 本実験における役割 |
りそな銀行 | 法人営業ノウハウ 検証環境 |
長年培ってきた法人営業知見をもとに、生成した経営課題起点の営業トピック資料を評価します。 本実験を行うクラウド環境を提供します。 |
NTTデータ | LITRON® Generative Assistant (LITRON GA) |
分析業務に利用するWebページのクローリングを行う生成AIサービスです。IR情報等の公知情報を取得し、情報識別や取得情報をベクトル化注4し、AIエージェントで情報分析できる形式に整形します。 |
LITRON® CORE | 自律的に業務を実行するエージェント型AI基盤です。ドキュメント作成エージェントやドキュメントレビューエージェントを利用し、分析結果の資料化を支援します。 | |
NTT | IOWNデータハブ技術 | データアクセスに対する独自の認可ポリシー管理・判定方式により、企業間データ流通におけるデータガバナンスとデータ提供者のデータ主権を担保する技術です。これにより、組織や距離の壁を超えた多種・大量データの利活用を可能にします。本実験では、TSR REPORTを対象としてデータガバナンスならびに利活用を実現します。 |
東京商工リサーチ | TSR REPORT (国内企業調査レポート) |
全国の企業を対象に調査員が直接取材し、公開情報も加えて作成された、大企業から中小企業まで幅広く網羅する、企業概要等整理したレポートを提供します。 |

なお、LITRON GAが作る公知情報等のベクトルデータベースと、東京商工リサーチのベクトルデータベース双方を、AIエージェントが参照する情報源として活用し分析業務を行うことで、精度の高い経営課題起点の営業トピック資料の提供を実現します。

図:本実験の全体概要
今後について
本実験の次のステップとしては、りそな銀行の営業店にて実業務での検証を予定しています。その結果を踏まえ、実導入や導入店舗の拡大、将来的には法人分野における幅広い業務への活用をめざします。また、NTTデータは本実証実験の成果をLITRON GAとLITRON COREの機能改善や拡充に反映し、りそな銀行における法人営業以外の他業務への活用に加え、他行への展開も推進します。さらに、NTTグループのシナジーを発揮し、生成AIサービス「LITRON」とIOWNの連携を強化することで、社会課題解決に寄与する新たな価値を創出します。
NTTデータグループが描く生成AI活用の未来
NTTデータグループは、積極的なAI活用の推進とガバナンスの両輪でお客さまのビジネス、当社のビジネスの変革を推進します。お客さまのビジネスでは、AIエージェントが指示に応じ自律的に対象業務のタスクを抽出・整理・実行する「Smart AI Agent®」の実現をめざします。当社のビジネスでは、ソフトウェア開発の大幅な生産性向上や実践的生成AI人財の育成を加速します。これにより、人手不足等の社会課題解決に貢献するとともに、人が付加価値の高い業務領域に注力できる世界を実現していきます。
参考リンク
LITRON COREはNTTデータが提供する自律的に業務を実行するエージェント型AI基盤です。
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/100300/
注釈
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注1
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想とは、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
https://www.rd.ntt/iown/ - 注2 IOWNデータハブ技術は、IOWN構想の中で異なる組織間でのデータ流通を促進する研究開発技術です。
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注3
仮想データレイク・ブローカとは、IOWNデータハブ基盤の構成要素です。
https://www.rd.ntt/iown_tech/post_61-1.html - 注4 ベクトル化とは、テキストを数値の「ベクトル」に変換するプロセスのことです。
- 「Smart AI Agent」は、株式会社NTTデータグループの英国および日本国内における登録商標、米国、欧州連合における商標です。
- 「LITRON」は、日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。サービスラインナップの詳細は下記サイトをご覧ください。
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/litron/ - その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータ
第一金融事業本部
金融ITマネジメント事業部
西川、塩澤、三島
E-mail:itmgenai@hml.nttdata.co.jp