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2025.8.8

SAP Concur導入による自治体DX推進

~福井県事例のご紹介~

2025年4月、75年ぶりとなる旅費法の大幅改正により、戦後から続いた定額制の旅費精算システムが根本的に見直されることとなった。この変革は単なる公務員制度の改正にとどまらず、自治体におけるDX推進の重要な契機として注目を集めている。
この背景にはAI技術の発達やダイナミックプライシングの普及など、現代社会における交通・宿泊サービスの多様化がある。従来の定額制では対応しきれない複雑な料金体系に対し、実費精算を基本とする新制度は、より効率的な旅費管理を可能にするとして期待される。
そのような中、7月2日~4日に開催された「第5回自治体DX展」で、NTTデータ、NTTデータ・ウィズ、コンカーは3社合同で、経費精算システム「SAP Concur」の福井県導入事例に関する講演を行った。
目次

旅費法改正の三つの柱と自治体への影響

パートナーマネージドクラウド契約(※)(PMC契約)を通じて協業を加速させるNTTデータとコンカー。
冒頭、NTTデータの小笠原学は、約十年間にわたって取り組んできたSAP Concurの導入・運用の実績を紹介するとともに、コンカーとの戦略的パートナーシップの締結により、多様なソリューションと連携したサービス提供が可能となった点に言及した。
続いて、コンカーの長谷大吾氏が、今後SAP Concurの導入が見込まれる公共機関や自治体に向けて、旅費法改正とそれに伴う自治体への影響について説明を行った。

図1:外部環境変化|国家公務員等の旅費制度の見直し

今回の旅費法改正は三つの主要なポイントで構成されている(図1)。
一つ目は「様式の廃止」。これまで法律に明記されていた旅行命令の様式が撤廃され、各自治体が時代に適した形式を柔軟に定められるようになった。二つ目は「定額制から実費精算への転換」。戦後の交通手段や宿泊施設の証明手段が限られていた時代とは異なり、現在は豊富なデジタルデータを活用した精算が可能となった。三つ目は「旅行者以外による支払いの明確化」。旅行代理店やコーポレートカードを通じた第三者による立替払いが正式に認められ、キャッシュレス決済の積極的活用が推奨される。
「これらの変更は国家公務員を対象としていますが、多くの自治体が国の旅費法を準拠して独自の規定を策定していることから、今後は地方自治体にも大きな影響を与えることが予想されます」と長谷はいう。

特に、実費精算への移行は従来の業務フローを根本的に変える可能性がある。従来の定額制では、旅行前に期間、行程、目的、費用がすべて決定され、比較的シンプルな承認プロセスで済んでいたが、実費精算制度では旅行後に領収書の確認、金額の妥当性チェック、地域別上限額との照合など、格段に複雑な審査業務が発生する。 財務省が定めた宿泊費は都道府県ごとに細かく設定されており、申請者も審査者も相当な負担増が予想される状況にある。

(※)

パートナーマネージドクラウド契約:当社ブランドとしてConcur Professionalライセンスの販売およびお客さまへConcur Professionalライセンスと連携ソリューションを一括して提供することが可能となる契約。

クラウドサービスが実現する業務効率化

こうした課題に対する解決策となるのが「旅費精算専用のクラウドサービス」である。SAP Concurは国内経費精算市場で11年連続シェアNo.1を獲得しており、時価総額トップ100企業のうち69社が採用するなど、大手企業での実績も豊富である。

図2:改正旅費法への対応と旅費業務のデジタル化

本システムの最大の特徴は、多様なキャッシュレス決済サービスとの連携能力にある。図2のフローのように、交通系ICカードのSuicaやPASMO、電子決済のPayPay、タクシー配車アプリのGOやS.RIDEなど、日常的に利用される決済手段から自動的にデータを取得し、手入力の手間を大幅に削減する。これにより入力ミスの防止と審査業務の効率化が同時に実現する。
さらに重要なのは、各自治体の規定をシステム内にロジックとして設定できる機能である。申請時に自動的に上限額チェックや規定適合性の確認が行われるため、審査者は基本的にクリアされた申請のみを扱うことになる。これまで入力ミスを前提としていた審査業務が大幅に軽減され、より本質的な業務判断に集中できる環境が整う。
「今は証明する手段はいくらでもあり、デジタルデータをうまく使うことで旅費業務を効率化できます。特にAIによるダイナミックプライシングによって予約する段階で旅費価格が変動したり、乗る時間によって電車賃が変わったりなどの変化も訪れてくるので、これらに対応するシステムが重要になってくると考えております。」(長谷氏)

福井県における先進的な導入事例

続いて、NTTデータ・ウィズの水野敏明が福井県のSAP Concur導入事例について、次のように説明した。
福井県の導入プロジェクトでは、審査指導課や会計課、人事課など、旅費業務に関わる全部署からキーパーソンがアサインされ(図3)、組織横断的な体制で推進された。
特に注目すべきポイントは、県警や県立病院など機微な情報を扱う部署への配慮にある。「システム内にグループ概念を設定し、各部署のデータに適切な垣根を設けることで、情報セキュリティを確保しながらも効率的な運用を実現しています」と水野は説明する。

図3:Concur Expense導入体制

福井県導入:プロジェクトの核心は二つのポイントに集約

図4:プロジェクトのポイント-(1)旅費業務の効率化に向けた検討)

さらに水野は次のように続ける。
プロジェクトの核心は二つのポイントに集約される(図4)。第一に、旅行命令時の定額精算から実費精算への転換である。事前の経路・各種目および金額の精査業務を簡素化し、旅行後の実費精算に重点を移すことで、全体的な業務負荷の軽減を図っている。第二に、同一地域内旅行の実費精算化による、計算プロセスの大幅なシンプル化の実現である。

図5:プロジェクトのポイント-(2)旅費法改正を見据えた設定

また、導入期間中にあたっては旅費法改正前・後の両方に対応できるよう、SAP Concurに2面の設定を実施し、最終的な判断を福井県庁に委ねることとし、柔軟な対応ができるよう準備を進めたと水野はいう。

AI技術の活用と未来への展望

現在のクラウドサービスには既にAI技術が組み込まれている。例えば、旅行先を入力するだけで宿泊費や交通費の相場を自動算出し、規定に適合する範囲での見積もりを作成する機能や、領収書をAIが読み取り、ホテル代にランドリー代やミニバー代が含まれていないかなど、細かな規定違反を自動検知する機能なども既に実装され、サービスとして提供されている。さらに、チャット機能を通じた旅費申請の作成支援や、最適な交通手段・宿泊施設の提案機能なども開発が進んでいる。これらの技術革新により、将来的には職員の業務負荷をさらに軽減し、より戦略的な業務に集中できる環境の構築が期待される。
「時代の変化に合わせてバージョンアップしていきながら、常に皆様の業務をアップデートし、業務効率化をやり続ける。今後ともこういったものをベースにご提案をさせていただければと思っております。」(長谷氏)

今後もSaaSの特性を活かした新機能が既存ユーザーに対して追加コストなしで提供される。法改正への対応も自動的にアップデートされるため、自治体側での個別対応は不要となる。この継続的な進化こそ、従来のパッケージシステムにはない大きな優位性といえよう。
今回の旅費法改正とクラウドサービス導入は、自治体DX推進における重要な試金石として位置づけられる。旅費精算業務は全職員が関わる基本的な業務でありながら、従来は非効率な手作業に依存していた領域である。この分野でのデジタル化成功は、他の業務領域への波及効果も期待される。

NTT DATAのSAP®Concur®ソリューションについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/sap-concur/

「旅費法改正対応!SAP Concurで自治体の旅費業務DXを実現」ウェビナー視聴はこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/event/archive/2025/029/

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