生成AIで国際送金の住所入力を効率化、「Addresstune™」をグローバル展開

~国際標準に準拠した住所構造化の自動処理を実現、国内での導入拡大を受けてEMEAから展開開始~

トピックス

2025年9月30日

株式会社NTTデータ
NTTデータ ルウィーブ株式会社

株式会社NTTデータ(代表取締役社長:鈴木 正範、以下「NTTデータ」)とNTTデータ ルウィーブ株式会社(代表取締役社長:三宅 信一郎、以下「NTTデータ ルウィーブ」)は、大手金融機関や大企業での採用を皮切りに、日本国内で導入が急速に進んでいる国際送金向け住所構造化サービス「Addresstune™(読み:アドレスチューン)」(以下:本サービス)を2025年9月30日よりグローバルに展開します。展開開始エリアはEMEA(欧州・中東・アフリカ)で、今後他地域へも順次拡大していく予定です。本サービスは国際送金のルール変更に伴う住所構造化の流れに即したもので、平文の住所データを生成AI活用により自動的、かつ効率的に国際的な標準形式に構造化し、入力負担の軽減や誤りを低減します。2025年4月より国内で提供を開始しています注1
国際送金の効率化やマネー・ローンダリング対策の強化が求められる中、住所情報の構造化は国際ルールに基づき2026年11月から義務化される予定です。NTTデータとNTTデータ ルウィーブは本サービスのグローバル展開により、各国に拠点を置く金融機関や企業が制度変更にスムーズに対応できるよう支援するとともに、各国のデータ保護制度・規則にも柔軟に対応しながら、安全かつ効率的な国際送金の実現に向けて取り組みます。

背景

国際送金の高度化と多様化が世界的に進む中、国際送金の利便性と安全性の両立が強く求められています。金融安定理事会(FSB)は2027年までに国際送金の速度・コスト・透明性・アクセス性を改善するロードマップ注2を策定し、金融活動作業部会(FATF)もマネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融注3対策の一環として勧告16注4を改定しました。
そうした流れの中で、2026年11月からは、国際標準であるISO20022注5対応の一環として、「非構造化住所」の使用が廃止される予定です注6。多くの金融機関や企業は長年蓄積した非構造化住所データを抱えており、それらを手作業で修正することは困難で、外注や大規模なシステム改修はコスト面でも大きな負担となります。こうした課題を解決する手段として、NTTデータとNTTデータ ルウィーブは生成AIを活用した「Addresstune」をグローバルに展開します。

サービス概要(特長)

本サービスは、NTTデータ ルウィーブの「STRUCTURIZ®注7を活用し、生成AIを使って住所データを整理し、ISO20022に準拠した住所形式への変換ができるSaaS型サービスです。スペルミスや表記揺れ、情報の欠落などを自動で検知するとともに、国ごとに異なる住所の表記をISO20022で定められている各住所項目(Ctry:国名、CtrySubDvsn:都道府県名・地域名相当、PstCd:郵便番号、TwnNm:市町村相当など)のどの部分に当たるかを判別し、正しく振り分ける仕組みを備えています。ISO20022では完全構造化に即応できない企業への緩和措置として、必要最小限の項目を構造化し、残りを非構造化住所項目(AdrLine)に記載することも認められており、本サービスではお客さま企業のニーズに応じて選択できる3つの構造化形式を用意しています。このため、大がかりなシステム改修をせずに、対応の優先度や必要性に応じて、構造化の範囲を段階的に拡張していくことが可能です。これにより、送金時の入力エラーや手戻り防止、住所の入力負担を軽減し、安全性と業務効率を同時に向上します。

住所入力の正確性向上と効率化

生成AIがスペルミス・表記ゆれ、情報の欠落を自動検知し、表記ルールに個別の違いがあっても一貫した処理を実現します。「国名」や「市町村相当」の必須項目については、候補を提示することで入力を支援します。

国際規格(ISO20022)対応

国ごとに異なる住所体系に対して、生成AIを活用した独自ロジックで解析することで、ISO20022準拠の細分化された各住所項目(「国名」、「都道府県名・地域名相当」、「郵便番号」、「市町村相当」など)を識別します。加えて、「国名」は2桁の国コード(ISO準拠)に変換をおこないます。

柔軟な住所変換方法

住所に対して、完全構造化/必須項目の構造化/主要項目の構造化の3種類の構造化パターンを用意しています。導入企業の環境に応じて柔軟に住所構造化パターンの選択が可能です。

図:Addresstuneの仕組み

表:選択可能な3種類の構造化パターンの概要

構造化パターン 説明 構造化の範囲
Fully-structured形式
(完全構造化)
完全構造化による最終形態 住所情報すべてをISO20022準拠の14項目にマッピング
Hybrid Basic形式
(必須項目の構造化)
必須項目に対応する構造化 “Ctry”, “TwnNm”の2項目を構造化
Hybrid Plus形式
(主要項目の構造化)
企業ニーズを受けて開発したNTTデータグループ独自の構造化パターン “Ctry”, “TwnNm”, “CtrySubDvsn”, “PstCd”の4項目を構造化

さらに、本サービスでは、企業が抱える非構造化住所データの課題に対して、下記3ステップで包括支援を行います。
これにより、お客さまが所有する住所データの品質に起因した構造化の精度低下を回避し、精度100%が保証できない生成AIの限界を補完する形で、構造化された住所データの信頼性を効率的に高めることが可能になります。単なるデータ整形にとどまらない、業務で安心して利用できる信頼性を確保している点が本サービスの特長です。

ステップ1:データ・クレンジング

スペルミス・表記ゆれ・情報の欠落などは生成AIで一定の補正は可能ですが、非許容文字の使用や住所の区切りにスペースやカンマが使えずピリオドで代替されるなど、システム固有の制約が構造化精度を妨げる場合があります。
これらの課題に対しては、補助ツールを活用して現状のデータ品質を分析・可視化することで、必要なクレンジングポイントを特定し、適切に対処することができます。効率的なデータ・クレンジングにより、データ品質の向上が可能です。

ステップ2:構造化

非構造化住所データを、ISO20022に準拠した構造化形式へ変換します。国ごとに異なる住所表記を解析し、各項目(国名、都道府県名、市町村名、郵便番号など)に正しく振り分けます。お客さまのニーズに応じて、3種類の構造化パターン(Fully-structured形式/Hybrid Basic形式(必須項目の構造化)/Hybrid Plus形式(主要項目の構造化)から選択可能です。

ステップ3:妥当性チェック

構造化された住所情報が国際送金で正しく使用できるかの妥当性をチェックします。
提供するチェックツールでは、過去の誤認事例や典型的な誤りパターンをもとに、注意が必要な箇所を特定するなど、効率的な確認作業を支援する機能を備えています。

今後について

NTTデータおよびNTTデータ ルウィーブは、今後も国際的な規制動向や業界ニーズを的確に捉えながら、住所構造化をはじめとするマスターデータ管理(MDM)注8の高度化に取り組みます。特に、国際市場において規制・制度対応への準拠が厳しく求められる金融業界においては、生成AIを活用した実践的なソリューションの提供を通じて、信頼性の高い金融業務の高度化と効率化に貢献します。
また、2025年9月末には世界最大級の金融イベント「Sibos2025」(ドイツ・フランクフルト)注9に登壇し、住所構造化の実績やAddresstuneのグローバル展開について、各国の金融機関に向けて紹介する予定です。NTTデータおよびNTTデータ ルウィーブは本サービスを含むデータ標準化・構造化領域へのサービス提供をはじめとし、国際的な課題解決と業界全体のデータ品質向上・業務効率化に向けた取り組みをより一層強化していきます。

注釈

  • 注1 生成AIを活用したISO20022対応を支援するサービスの提供開始
    https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/032600/
  • 注2 FSB(金融安定理事会)が、2021年10月にクロスボーダー送金の改善に向けたロードマップを作成しています。このなかで、4つの目標「送金コスト、着金スピード、アクセス、透明性の改善」を2027年までに達成することを求めています。
  • 注3 マネー・ローンダリング(Money Laundering:資金洗浄)は、犯罪によって得られた収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関による収益の発見や検挙を逃れようとする行為をいいます。
    テロ資金供与:テロ行為の実行資金、テロ組織の活動資金等のために、資金や場所等を収集・提供等する行為のことをいいます。
    拡散金融:大量破壊兵器(核・化学・生物兵器)等の開発、保有、輸出等に関与するとして資産凍結等措置の対象となっている者に、資金または金融サービスの提供をする行為のことをいいます。
  • 注4 「電信送金」における情報共有の義務を定めたもので、テロ資金供与対策を強化するため、送金に金融機関以外も関与する場合でも、情報が正しく伝わるよう透明性を高めることが主な内容です。具体的には、送金元と送金先の金融機関の間で、送金者や受取人の正確な情報を迅速に共有することに言及されています。
  • 注5 ISO20022とは、国際標準化機構(ISO)が定める金融サービスに関連するデータフォーマットの共通化・標準化を目指して規定された国際標準規格です。システム処理に適した形でより多くの情報を送受信することが可能な共通フォーマットとして、Swift(国際銀行間通信協会)や世界各国の国内決済において採用されています。
  • 注6 従来の「住所をそのまま入力する方法」が禁止され、ISO20022に対応した新しい標準フォーマットでの入力が義務づけられます。
  • 注7 STRUCTURIZでは、自然言語解析や大規模言語モデルなど幅広いAI技術を駆使して住所構造化ルールを学習させるため、投入された住所情報をSwiftの新フォーマット(MXフォーマット)における構造化住所へ変換することが可能です。セキュリティー面では、生成AIによる再学習防止策や外部漏洩対策を講じています。
  • 注8 顧客情報や製品情報などの基本となる重要データを一元的に管理し、その品質を維持・向上させる活動です。
  • 注9 Swiftが主催する世界最大級の国際金融イベントです。1978年から毎年開催されており、世界中の金融機関、中央銀行、規制当局、ITベンダーが一堂に会し、金融業界の未来を議論・共有する場です。
  • 「Addresstune(アドレスチューン)」は、NTTデータが国内において登録商標中の名称です。
  • 「STRUCTURIZ(ストラクチャライズ)」は、NTTデータ ルウィーブの国内における登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
第三金融事業本部
e-ビジネス事業部
デジタル戦略室(OpenCanvas Atelier)
山本、品川、土橋
E-mail:addressstructuring@hml.nttdata.co.jp

NTTデータ ルウィーブ株式会社
アドバンスド・ソリューション事業本部
第二アドバンスド・ソリューション事業部
遠藤、松田、角
E-mail:sriz-service-info@hml.nttdata-luweave.com