災害対応の高度化や平時サービスの多様化を支える電力データ速報機能が全国展開
~石川県での災害対応において電力データ活用の有効性や活用可能性を確認~
トピックス
2025年9月1日
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)が開発に携わる送配電システムズ合同会社の「電力データ集約システム」(以下、本システム)において、電力データの速報値連携機能(以下、本機能)が2025年7月末に全国10社すべての一般送配電事業者注1との接続を完了し、電力データの取得から数時間後の提供が全国で可能となりました。
本機能は、スマートメーターで取得した30分ごとの電力データを、本システムを介して、許可された地方公共団体(以下、自治体)や所定の手続き注2を経たデータ活用事業者に対して、数時間前のデータ提供を実現するものです。2025年3月に一部の地域を対象にすでに本機能の運用を開始していましたが、同年7月に全国展開が完了しました。これにより、災害対応の迅速化・高度化に加え、見守り支援や環境対策など平時のサービスの質向上も期待されます。
NTTデータは今後も、データドリブンな災害対応の実現を目指し、安全・安心な社会づくりに貢献していきます。
背景
2020年6月の電気事業法の改正(2022年4月施行)により、一定のルールと配慮のもと注2、電気事業者以外の事業者も含めて、スマートメーターから得られる電力使用量等の電力データの活用が可能となりました。これを受け、全国の一般送配電事業者10社の電力データを一元的に収集・蓄積・加工・提供することを目的として構築されたのが「電力データ集約システム」です。NTTデータは、その初期段階から開発に携わっています。
本システムは2023年9月に運用を開始し、2025年2月には全国の一般送配電事業者10社との接続を完了しました。しかし、従来は前日までの電力データしか提供できず、データ取得から提供までに1日以上の遅延がありました。2025年3月には一部の地域を対象に数時間前の電力データが連携可能な速報値連携機能の運用を始め注3、同年7月に本機能の全国展開を実現しました。
概要
今回の電力データ集約システムにおける速報値連携機能の全国展開により、自治体やデータ活用事業者が数時間前の電力データを取得できる基盤が全国で整備されました。
「災害対応・防災」活用の観点では、災害発生時の被災状況の可視化、捜索・救助の最適化、被災者の見守り業務や罹災証明書発行等の効率化など、災害対応の高度化を期待できます。
また、「平時」活用の観点においても、見守り支援、環境対策、経済活動への活用など多様な分野での活用が期待できます。
NTTデータは、資源エネルギー庁からの委託のもと、自治体の防災業務における電力データの利活用に関する検討を進めています。2024年度には石川県と協力し、同年1月に発生した能登半島地震および9月の奥能登豪雨災害における自治体の災害対応業務において、以下のユースケースでの電力データの活用について担当者へのヒアリングなど机上の検証も含め、その有用性の確認を実施しました。特に被災者見守り業務への活用では一定の有用性が確認でき、他ユースケースについても活用できる可能性があることを確認できました注4。
<電力データ活用した災害対応・防災活用検証事例:2024年度石川県での事例>
(一部ユースケースは、電力データ集約システムの利用申請前であったため、事後検証のみを実施)
ユースケース | 検証の概要 |
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被災状況の可視化 (事後検証) |
発災直後、災害対策本部の情報収集班などが、各地域からの被災情報が届く前の段階において、通電状況をもとに広域的な被災状況を推定するための情報として、電力データが活用可能かどうかを検証しました。 |
捜索活動への活用 (事後検証) |
発災時点における各家屋の在宅状況を電力データから推定することで、救助活動において在宅の可能性が高い家屋を優先的に捜索するなど、救助活動の最適化が可能かどうかを検証しました。 |
被災者見守り業務への活用 | 市町村の福祉課が実施している被災者見守り業務において、担当者が住民の住居を訪問しても不在のため接触できないケースが多く見られます。 本検証では、電力データを訪問計画策定時の参考情報として活用し、在宅傾向を推定することで、訪問業務の効率化が可能かどうかを検証しました。 |
罹災証明書発行業務への活用 (事後検証) |
罹災証明の発行申請時に、申請者の住民登録が確認できない場合、居住実態を確認するために、各自治体の判断で、公的機関の領収書や地区長による居住証明書などの追加書類提出を依頼し、後日再訪となるケースが発生しています。本検証では、電力データを活用して居住実態を確認することで、住民および窓口業務担当者の負担軽減が可能かどうかを検証しました。 |
地域の復旧状況・復興状況確認 | 電力使用量の統計データを復興指標として活用することで、各地区の復旧・復興状況をモニタリングし、復興計画の進捗確認や見直しのためのインプット情報として活用できるかどうかを検証しました。 |
今後について
NTTデータは今後も、電力データの利活用の高度化に向けて継続的に取り組みます。
また、官民連携による取り組みの一環として、2025年度以降は複数の自治体と連携し、電力データを活用した災害対応業務等のシミュレーションを実施する予定です。これにより、災害対応業務の高度化や、平時における電力データの活用方法を検証し、より多くの自治体にとって有用な仕組みの構築を目指します。
注釈
- 注1 一般送配電事業者とは、地域ごとに電力の送配電設備を運用し、供給区域で託送供給を行う事業者のことで、全国10社が認定されている。
- 注2 電力データの外部提供は、個人のプライバシー保護や公正な競争環境を確保するため、原則として認定電気使用者情報利用者等協会(一般社団法人電力データ管理協会)を通じた手続きが必要であり、個人データの提供には電気の契約者の同意が必須。ただし自治体などには、災害対応等の目的に限り無償提供される。なお、データ活用は個人のプライバシー保護や公正な競争環境の確保に配慮したうえで行うこととなっている。
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注3
数時間前の電力データを全国で順次活用し、社会課題を解決
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/043000/ -
注4
詳細は、資源エネルギー庁公表の「自治体防災業務における電力データ利活用マニュアル(2025年5月改訂版)」中、「電力データを自治体防災業務に活用した事例紹介」の「4.3 石川県における電力データを活用した自治体災害対応業務」に記載。
https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250523003/20250523003.html
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