ウラノス・エコシステムに資する化学物質情報トレーサビリティ管理システムを構築開始

~NEDO「ウラノス・エコシステムの実現のためのデータ連携システム構築・実証事業」に採択~

トピックス

2025年7月14日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「ウラノス・エコシステム注1の実現のためのデータ連携システム構築・実証事業/化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムの開発」助成事業注2においてシステム開発事業者に採択されました。
今回の採択を受けて、2025年度中に化学物質情報のトレーサビリティ管理システム(以下、本システム)の開発を行います注3。本システムは、製品に含まれる化学物質情報を標準化されたデータフォーマットで指定した相手に伝達できる機能を備えたトレーサビリティシステムであり、原料から最終製品の製造までに関連する化学品メーカー、材料メーカー、商社、部品材料メーカー、部品メーカー、完成品メーカー等の事業者が使用するものです。従来、製品に含まれる化学物質の確認や調査のやりとりはメール等を用いたリレー方式で行われており、各事業者の対応負担が重くなっていました。本システムによって、物質の規制情報等を川上企業から川下企業までサプライチェーンを構成する企業にセキュアかつシームレスに伝達が可能となるため、サプライチェーン関係者の業務負担の低減に寄与します。さらに、将来的には、再生材料情報注4などの新たな情報も展開できるようになることで注5資源の再利用促進につながり、産業廃棄物の削減などに寄与できるものと考えます。
NTTデータは、今後も業界横断で安全・安心にデータを連携するプラットフォームへの取り組みを続けることで、サーキュラーエコノミーの実現をめざします。

背景

近年、廃棄物問題や気候変動問題等の環境制約に加え、世界的な資源需要と地政学的なリスクの高まりといった資源制約の観点から、資源を効率的かつ持続可能に利用し、廃棄物を最小限にするための経済モデルであるサーキュラーエコノミーへの移行が喫緊の課題となっています。また、サーキュラーエコノミーにおいては物質の成分情報の管理が重要になりますが、特に化学物質のデータ流通ではREACH規制注6など、年々厳しくなる化学物質規制に迅速に対応する必要があり、規制変更時には原料から完成品の製造までに規制対象化学物質が利用されていないかの再調査が必要になるなど事業者負担が課題となっていました。
このような課題を解決するため、NTTデータは、化学物質情報のデータ連携を安全・安心に行うデータ保護対策や、信頼性を確保する技術開発、大規模実証を目的とした取り組みである今回のNEDO助成事業に参加しました。

取り組み内容

本取り組みで開発するシステムの具体的な機能は、以下のとおりです。
本システムは独立行政法人情報処理推進機構デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(以下、DADC)のアーキテクチャに関する助言のもと、ウラノス・エコシステム・データスペーシズのアーキテクチャ注7に準拠し、NTTデータが提供するバッテリートレーサビリティプラットフォーム注8で利用しているサプライチェーン間で安全・安心なデータ連携を行う仕組みを生かして構築します。これらの機能により、これまでの課題であったメールでのやりとりや情報管理などの負担を低減することができます。

トレーサビリティ管理機能

原料から完成品の製造までに関係した化学品メーカーや製造メーカー等サプライチェーンに含まれる全ての事業者間の取引関係を同一IDにひもづけることで、管理・トレースできる機能。

情報伝達機能

サプライチェーン上の事業者間で化学物質の成分情報や物質含有確認情報等を指定した相手にデータ連携して伝達できる機能。

また、本取り組みでは、製品含有化学物質情報・資源循環プラットフォーム(Chemical and Circular Management Platform以下、CMP)構想の実現もめざします。具体的には、再調査の効率化による化学物質規制への迅速な対応や資源循環に関する部品リユース情報や再生材料情報(含有率、純度、ソース)まで伝達可能とするグローバルな情報伝達基盤を構築します。そのために、業界課題の整理や業務要件の検討を推進する役割を担うCMPタスクフォース注9や化学品・電機電子・自動車等の関連する事業者で使用するアプリケーション提供事業者と連携して、大規模実証実験、実運用へ取り組みます。

2025年度内に情報伝達基盤である本システムの開発機能検証を完了し、2025年度末にはユーザーとなる事業者や本システム上で動作するアプリケーションの開発ベンダーを含めた大規模な実証実験を開始し、2026年に実運用を予定しています。
なお、CMPに関する問い合わせや本大規模実証参加への相談は、CMPタスクフォースhttps://chemsherpa.net/cmpにて受け付けています。

NTTデータは、本取り組みを通じた技術開発や実証を推進するとともに、安全・安心にデータを連携するプラットフォームの提供を行い、今後もサーキュラーエコノミーの実現をめざします。

図:今回の取組事業イメージ

エンドースメント

このたび、私たちは業界全体の課題解決および価値創出を目指し、CMP構想を推進しております。本取り組みでは、業界の多様な利害関係者の意見を集約し、将来を見据えた標準仕様の策定や運用ルールの整備等を進めております。
今回NEDOの「ウラノス・エコシステムの実現のためのデータ連携システム構築・実証事業/化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムの開発」に採択され、CMP構想の根幹である含有化学物質の情報伝達が実現されることになります。2025年度末にはユーザー、アプリケーションベンダーをはじめとした業界関係者による大規模実証を進め、CMP構想を実現したいと考えております。
この取り組みを円滑かつ実効性のあるものとするためには、技術的な実装力と高度なプロジェクトマネジメント力を有するパートナーの存在が不可欠です。今後も、NTTデータとともに、持続可能かつ価値ある業界基盤の実現に向け、取り組みを進めてまいります。

CMPタスクフォース 共同リーダー
キヤノン株式会社 サステナビリティ推進本部 古田清人
トヨタ自動車株式会社 先進技術開発カンパニー モビリティ材料技術部 高木義幸

関連リンク

NTTデータ サーキュラーエコノミー実現に向けたデータ流通基盤
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/circular-economy/

注釈

  • 注1 ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)は、経済産業省が推進する、企業や業界、国境をまたぐ横断的なデータ連携基盤の構築を目指す活動(イニシアティブ)の総称です。
    https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/ouranos.html
  • 注2 NTTデータは、2025年6月に、「ウラノス・エコシステムの実現のためのデータ連携システム構築・実証事業/化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムの開発(助成事業)」に採択されました。本事業はNEDO 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構が公募を実施しています。
    https://www.nedo.go.jp/koubo/IT3_100347.html
  • 注3 NTTデータはこれまでも2024年10月に経済産業省の「令和5年度 補正資源自律経済確立産官学連携加速化事業(サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォームの調査・検証に関するオープンイノベーション事業)」を受託しています。
    https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/2024/s241022001.html
    また、産学官のパートナーシップが2025年の立ち上げを目指しているデータの流通を促す「サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォーム」の実現に向けて取り組んでいます。
    https://www.meti.go.jp/press/2023/12/20231226005/20231226005-2.pdf
  • 注4 再生材料情報とは、製品・資源の再利用や再資源化する際の素材に関する情報です。
  • 注5 製品回収事業者やリサイクル事業者など、いわゆる静脈系事業者へのデータ連携も想定し、静脈系の循環性指標に関する情報も連携可能なシステムとして開発を行います。具体的にはデータフォーマットとしてISO/IEC82474への対応を予定しています。
  • 注6 REACH(Registration Evaluation Authorisation and Restriction of Chemicalsの略称:化学品の登録、評価、認可および制限に関する規則)は、EU(欧州連合)で2007年6月1日に発効した規則
  • 注7 経済産業省及び独立行政法人情報処理推進機構は、ウラノス・エコシステムの取組における技術的な参照文書である「Whitepaper:ウラノス・エコシステム・データスペーシズ リファレンスアーキテクチャモデル(ODS-RAM)」を公開しています。
    https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/reports/ouranos-ecosystem-dataspaces-ram-white-paper.html
  • 注8 産業データの安全な流通を実現する連携プラットフォームの提供開始
    https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2024/051600/
  • 注9 CMPタスクフォースは、製品含有化学物質情報・資源循環プラットフォームを検討している業界団体です。2025年1月時点で、60の企業、団体で推進中です。
    https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/chemicals/pdf/002_08_00.pdf
  • 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
第三公共事業本部
デジタルプラットフォーム事業部
第一システム統括部
第一営業担当
澤西、山田、長田

株式会社NTTデータ
第二インダストリ事業本部
製薬・化学事業部
第1ビジネス統括部ビジネス担当
小川、山田

株式会社NTTデータ
第一インダストリ事業本部自動車事業部
第2ビジネス統括部ビジネス担当
水谷、増田
E-mail:nttdata-traceability@hml.nttdata.co.jp